「繊細でエレガントな作品が印象的だったから。」
私にロゴデザインをご依頼くださった理由を、その人はこうお話して下さいました。
ご感想をいただきました
『小さきものの声を聞け。』
映画配レーベル
SYNONYM様
ロゴデザイン
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・きっかけは
・なぜ、それが好きなのか?
・大切にしているのは「正義感」と「客観性」
・美しさを象徴するもの
・デザインするにあたり、気をつけたこと
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||きっかけは
おお〜。
うんうんうんうん。
ふーーーん、なるほど!
あー、こっちもいいなぁ。
このフォントも、ちょっとかわいいかも。
「かわいい、全部。」
2021年初夏。都内の、静かなカフェの1角。デザインをプレゼンすると、ひとつひとつのデザインを見ながら、星野さんは20代のお嬢さんぽい言い方で、感想をもらして下さいました。口元に品があって、かわいい方です。
映画配給レーベル、SYNONYM。
シノニムと読みます。
意味は、“同義語”。
“素人目線で選ぶ変態映画” を配給するレーベルです。今年(2021年)秋に、1本目の映画「PITY ある不幸な男」が、全国60ヶ所の映画館で上映されます。ご依頼主の星野連さまより、ロゴデザインのご依頼をいただきました。
お話を頂いたのは、まだコートを来ていた季節だったと思います。
数年ぶりにお会いする星野さんは、数年前の印象通りに全身黒のカジュアルなウェアに赤いリップ。つややかな髪に、以前と変わらず同年代の女の子よりずっと落ち着いた印象を携えていました。
「映画の仕事がしたいんです。」
初めてお会いした頃、そうお話なさっていてから、わずか2年。
映画好きな女の子は、自分との約束を忘れず果たし、海外で1本の映画を買い付け、私にロゴデザインの依頼をするために連絡をくれたのでした。
最初にお会いした頃、私はWAKAという作品の営業資料をあちこちに送るためにコンセプトブックの文言をしたためたり、印刷データを作ったり、手作業で製本作業をしたりしていました。
一方で星野さんは、「いつか映画の仕事に就くため」に、3ヶ月足らずで映画200本を観る、という取り組みをしていました。その一部始終を、お互いに共有できる環境にあったのです。
日中にいくつかのアルバイトを掛け持ちしながら、夜は深夜まで数本、ぶっ通しで映画を見る。決して時間がひとより沢山あるわけではない中、映画に時間を費やす日々を数ヶ月過ごし、200本を見終わるか終わらないかの頃、星野さんは映画配給会社で働くことになりました。予想よりもずっと早く。
それを足がかりに、さまざまな紆余曲折を経て、とうとう映画のバイヤーになるという夢を果たしたのです。フリーランスとして、全くの個人で。
裏話をいろいろ聞いていくうちに、椅子にじっと座っていられないような共感と言いましょうか、衝動を感じた私は、星野さんから正式に「お願いします」と言われるより先に
『ロゴデザイン、私にやらせて。一緒に作ろうよ!他の誰より絶対、私に作らせた方がいいよ!』
と前のめりで伝えたのでした。他の誰かが作ったデザインを見たら、きっと私は後悔する。そう直感的に感じたからです。
そこから、私との世界観デザインのセッションが始まります。特急コースで。ヒアリングを重ねながら、SYNONYMの目指すところ、映画配給を通して伝えたいことを、星野さんの心の深いところに降りて、さぐっていきました。
||なぜ、それが好きなのか?
心の深い部分に触れていった
SYNONYMは、一般受けしそうな映画を扱いません。恋愛ものやコメディもなし。専門ジャンルは、猟奇的な変態映画です。
昔、韓国映画で「猟奇的な彼女」という作品がありましたが、星野さんはこわーい映画や漫画、カルチャーがお好きという、とても個性的なお嬢さんなのです。この綺麗な顔立ちの、大人びた歳下の友人に私は興味津々でした。
え、かわいい顔して、そーゆーのが好きなんだ?
初めてお話した後、好きなカルチャーの話になって、猟奇殺人などをテーマにした漫画や映画のタイトルがぞくぞくぞくぞく出てくるので、思わず笑ってしまいました。知らないタイトルのものは調べたのですが、どんなストーリーなのか知れば知るほど
こわい!
気軽に人に「これが好き♡」って言うにはちょっと壁があるような…。笑
ご本人の見た目の綺麗さからはちょっと想像できない。そのギャップが、彼女の魅力でした。私は魅力的な人がいると、知りたくなります。
なぜ変態映画が好きなのか。その理由を探ることが、絶対に、彼女の立ち上げたレーベル SYNONYMのロゴデザインをするためには必要でした。
なぜそれが好きなのか、その土台には、何が隠れているのか。
子供の頃のエピソードや、彼女の趣味嗜好などから、『謎』を紐解いていきました。
さまざまな角度からヒアリングを重ね、導き出されたデザインコンセプトはー。
狂気と美しさは紙一重
弱き者の声を聞け
<ご提案したムードボード>
<デザインマインドマップ>
||大切にしているのは「正義感」。それが底上げする「客観性」
お話を聞いていくうちに、彼女が大切にしているものは、正義感であり、『客観的である』というものさしだという事にたどり着きました。
変態映画
って聞くと、私たちは揶揄したり、排除しようとしたり、様々な反応が生まれます。そうではなくてー
なぜこうなったのか?そこを考えなければ、問題はなくならないよ。
一般的には受け入れられ難いジャンルのもの達を彼女が好むのは単なる好奇心ではなく、底上げしているのは幼少期から培われた正義感でした。
少数存在するものに好奇の目を向けるのではなく、ちゃんと見ようよ。話題にあげようよ。なかったことにするのは変だよ。
それが彼女の真意であり、伝えたいことでした。
彼女の心の琴線にふれたものを集めたアルバムには、辞書の1ページのようなものが、収まっています。それは病院で使われる言葉を一覧にしたもの。左が「主観的」、右が「客観的」に分類されています。なぜこのページが良いと思ったの?と聞くと、こう返ってきました。
「自分も、意識しないと主観的にものごとを判断して言葉にしているから。常に客観的でありたい。」
||美しさを象徴するもの
もうひとつ、印象的なやりとりがあります。
「美しさ」って聞いて、ぱっと浮かぶものを教えて下さい。
デザインのひとつのバージョンとして、受け取ったインスピレーションを形にするため、こんな質問をしたんです。帰ってきた答えは…
『クリムト、かな。』
彼女の正義感の強いところ、思慮深いところ。
そして審美眼のあるところ。
私を惹きつけている理由です。
こんな回答が返ってくる方とお仕事できて、最高に幸せでした。
<デザインするにあたって気をつけたこと>
・優美、あやうさ、不均衡、謎解き。
この4つのキーワードをもとに、インスピレーションを下ろしながらデザイン作業を進める。
・彼らの心の動きとして、繊細さを取り入れる
・モノクロでデザインする
映画のスクリーンに映し出されることを想定して、モノクロでの表現を最重視しました。
<決定デザイン>
<デザインの意図>
Yを背中合わせにしています。美しさと狂す気は紙一重。ブランド名にふたつ入っているYを印象的デザインしたもの。背中合わせの人を表しています。パッと見てさりげなく「?」と思わせるデザインです。
私はデザインが好きです。もっというと、綺麗なものを作ることが好きです。
そしてさらに。綺麗なものを作ることで、ひと様の人生のステージチェンジに立ち会い、お役にたつこと。それが私の望みであり、ミッションだと感じています。
星野さん、まだ26歳なんです。
アルバイトをいくつもかけもちしながら、学生の頃からの夢を叶えました。
めちゃくちゃかっこいいと思いませんか?
人ととしての成熟度に年齢は関係ない。
そう思うんですよね。私の知らない映画の世界を、沢山たくさん、教えて頂きました。これからますます、世界を広げていかれるのでしょう。
やりがいのあるお仕事を、ありがとうございました!次回作も一緒になにか作れたら、とっても嬉しいです。
。。。。。
星野さんのご感想はこちら
<SYNONYM配給作品>
PITY ある不幸な男(ギリシャ映画)2021年上映
PIGGY(スペイン映画)2023年上映
エルダリー(スペイン映画)2024年上映
ほか多数
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