こんにちは。
世界観コンセプト・ナビゲーター/
アートディレクターの遠藤朝恵です。
年末から携わっているプロジェクトが、リリースされました。
ノート(日記帳)の制作を担当しているんです。
紙を愛してやまない私にとって、ノートをデザインできるってこの上なく幸せなこと。
備忘録として、プロジェクトのことを書き留めておきます。
とっておきのノートを作っています。
『HERO’S JOURNAL』裏バナシ
〜プロダクト詳細〜
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- 1.どんなノート?
- 2.紙選びのこと
- 3.お互いの夢を応援し合えるということ
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どんなノート?
よりよく生きるための自分まとめ
「マインドコンディショニング日記
<ノートの目的>
書くことによってセルフコーチングできたり、自分を力づけることができるノートです。
100ページを超える本文ページには“3行日記”をはじめ自分を知ってよりよく生きるためのヒントがみつかるワークシートなど全18種類のコンテンツで構成されています。
このノートを企画したのは友人でコーチの岩渕加奈子さん。岩渕さんからノートの制作のお話を頂いたのは、2020年ハロウィンの日でした。かねてからの夢だった日記帳の制作を、個人で制作したい。そのためのデザインとディレクションを相談したい、とのお話でした。
ノートのデザインといえば、まっさきに浮かぶのが紙の選定です。
表紙と本文の用紙、そしてインクの1色。
たった3要素で全てが決まると言っても過言のない、紙のプロダクト。
かねてから文房具好きだし、紙選びが大好きな私にとってはまたとないお話。ふたつ返事でお引き受けしました。
<制作過程>
ノートは実際、こんな風に制作進行していきました。
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2020.10
初回打ち合わせ、ヒアリング
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020.12
岩渕さん:台割り(ページ番号と内容が記載された表)とラフレイアウト提出
私:紙の選定と加工を考える
↓
2021.1〜
遠藤:ラフを元にデザインデータ制作を提出
岩渕さんを紙商社さんへお連れして顔合わせ
↓
岩渕さん:修正指示をする
遠藤:用紙と製本形式の決定
↓
遠藤:修正を反映したデザインデータを提出
↓
2021.3 校了(全レイアウトOK)
ーーー
修正指示とその反映を、何回か繰り返すのと並行して、用紙のご提案と表紙のデザインを進めました。
私は一時期、雑誌のレイアウトをメインに仕事をしていたのでその経験上、本文ページのワークシート、18パターンのデザインを考えるにあたってまずやったことは2つです。
「1ページあたりの最大文字数と行数を把握する」
「ページまわりの余白を決める」
ぺージもののデザインは1冊を通しての統一感が大切なので、ページフォーマットをきちんと作るのですね。とくに文字の大きさが違ったり、行間がまちまちなのはNG。罫線の行間なども、1冊を通して違和感なく設計されている必要があります。
ですので最初にやったのは、目的・イメージに沿う余白の量をキープしながら文字量の多いページを特定してレイアウトを組むということでした。
紙選びのこと
そして、私が一番楽しみなのは用紙の選定です。レイアウトを組み始めると同時に、紙選びを始めました。
用紙が決まるまでの工程は下記の通りです。
- 用途やイメージに沿う紙を独断で数種類選ぶ
- 業者さんに、紙の適性を尋ねる
- クライアント(岩渕さん)にご提案する
ひと口に紙といっても、一般的なコート紙、アート紙、上質紙だけではなく色々な銘柄があります。何千種類と存在するのではないでしょうか。(世界規模で見たらもっとあるはず)
単純に白い紙だって、白色度も質感も様々です。その、星の数ほど存在する中から、クライアントの目的とイメージに沿う1枚をご提案する。それが私の一番得意で、好きなことかもしれません。
素材を選ぶのが好きだし、紙ほど面白い素材はないなと、思っています。好きだから、散々見てきました。ショールームに1時間なんて、余裕で過ぎていきます。
…だからなんとなく、分かるんですよね。お話を伺えば。
クライアントの目的やイメージに合うのはこの紙だろうなと。
そんな私が今回表紙にご提案したのは、こちら。この3種類でした。
岩渕さんからのオーダーは
「机に置いておいても隠さないでいい、上質感がある」こと。
あからさまにセルフコーチングをテーマにしたノートだと分からない、かつ品があるもの。ようは、使う人の日常に溶け込むことだなと解釈しました。男女問わず好まれることと、品のいい佇まいということも外せません。
半年間毎日めくってもクタクタにならない程よい厚みの表紙。
コクのある深い色合いに箔加工を施す予定です。ピカピカしていない質感も、使う人のい「日常に寄り添う」という趣旨に合っています。
そして、本文の用紙も2種類をご提案して、ペンの滑り具合(カサカサかスルスルか)、白色度(真っ白かクリームがかっているか)などお好みで選んで頂きました。
こちらが、束見本(つかみほん)です。ここまで形で見られると、よりリアル!ワクワクします。
本文用紙の厚さが1mm違うと、手に取った時の感触が変わります。
※このプロジェクトを進めるにあたっては株式会社市瀬 東京店の取締役 山口貴史様にもアドバイスと、制作工程全般にご尽力頂いています。紙についての知識と人脈を、惜しみなく提供下さり、感謝申し上げます。
お互いの夢を応援し合えるということ
「自分って何なんだろう?」「自分の本当にしたいことがわからない!」と悩む人に「どうしたら力になれるだろうか?」と考えた答えが、日記帳だったんです。
クライアントの岩渕さんは静かにそう言います。
新しい生活様式の中、家で過ごす時間が増え、これまでの自分の「生き方」「働き方」を見つめ直す人が増えているようです。そして「自分って?」と悩んだり、メンタル不調を訴える人も同様に増えていると感じています。「どうやったら、そうした人たちの力になれるだろうか?」 その答えが日記帳でした。(岩渕さんのコメントより)
少しの時間、自分に向き合う。
それを毎日続ける。
そうすることで自分の心を整え、より良い人生を生きる道筋が通ってくることを、岩渕さんはご自身の経験から確信なさっています。
私と岩渕さんの出会いは2019年。
とあるコミュニティでした。
お互いに2年前に、それぞれが決めたひとつの目標に向かって応援し合っていたのです。
私は、「百人一首の和歌100首を全てグラフィックデザインに起こす」というチャレンジ。
岩渕さんは「子どもの夢を応援する手帳を作る」でした。
手帳の企画考えたり、なんのツテもない製造メーカーに売り込んだり。
岩渕さんが真摯にその夢に取り組む姿を、すぐそばで見ていました。
私はその時のチャレンジでWAKA100designsという作品を仕上げ、その記念に作品上映会とトークセッションを開催しました。この作品を仕上げることも、トークセッションという形で人前で自分の事を話すのも。どちらも夢のひとつだったのです。
その上映会には、たくさんの人が手を貸してくれたのですが、岩渕さんにも陰ながらお手伝い頂いていました。上映会までの数ヶ月、コーチングで私のメンタルを支え、タスク・スケジュール管理をしてくれていたのです。まさにマインド・コンディショニングでした。
聡く、冷静で誠実な彼女のリードに、とても助けらたこと
今でも時折、思い出します。
岩渕さんの「子供の手帳を作る」という夢はまだ道半ばです。けれどあの時も今も、岩渕さんの思いは変わっていなくて。記録することが、自分の支えになる その真理を、多くの人に伝えたいのです。
いつか子供の手帳を作れる日が来る、その前に「まず自分が欲しい日記帳を作ろう。」
そんな思いから、このプロジェクトはスタートしたのでした。
プロダクトを個人で生産するって、覚悟が要ります。時間も、お金もかかる。
だから、間違いなく目的地に辿り着けるように、最後まで手を引いて連れて行って差し上げたい。それが、アートディレクターの役割だから。
誰かの夢を応援するって、通りすがりの誰かに親切にするようなものですね。
見返りを求めないし、最終的には自分の心が温まる。
例えば…ベビーカーで階段を降りようとするママに手助けをして、「あとでおやつちょうだい」とか、思わないし
ハンカチを落とした人に「落としましたよ」って渡す時
「私の荷物を持ってくれるかな」なんて考えないでしょう。
そこに見返りを求める気持は一切なくて、ただ目の前の人が目的地まで無事にたどり着けるように、ちょっと手を貸しただけのこと。そして、親切にできた自分のことを、きっと少し誇らしく思うはず。
「こういう自分、なんかイイな」って。
だから私、今ちょっと誇らしいんです。
かなちゃんへ
素敵な企画をお手伝いさせて頂けて、とっても嬉しく思っています。あと少し、最後まで応援させてね。
大人っぽくて控えめで、それでいて品がある。そんなノートを目指してデザインしました。
私の中の岩渕さんを表現する。そんなプロジェクトでもあります。
プロジェクトは私の元を離れ、印刷・製本工程に入りました。製本方式にまでこだわった1冊、完成までもう少しです。
仕上がりが楽しみで仕方ありません。
<ヒーローズジャーナル仕様>
サイズ:B5 182×258mm
ページ数:116ページ 厚み約7mm
表紙: カラープラン217kg/ダークブラウン
箔押しつや消し銀
本文:クリームキンマリ73.8kg
特色1色印刷
『HERO'S JOURNAL』
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